「アルバイトで約10年、正社員と同じ仕事をしてきたけど退職金は受け取れる?」などと不安に感じている方もいるかもしれません。実際のところ、条件さえ揃えば、アルバイトでも退職金を受け取ることができます。今回は、アルバイトの退職金について詳しくご紹介します。
アルバイトでも退職金がもらえる
冒頭でも述べた通り、アルバイトやパートでも条件さえ揃えば退職金がもらえます。ここでは、どのような条件なのかについて詳しくご紹介していきます。
パートタイム労働法とは?
アルバイトやパートには「パートタイム労働法」という法律が適用されます。この法律がある限り、アルバイトやパートでも退職金がもらえる可能性があるのです。名称には「アルバイト」と記載がありませんが、しっかり適用されますのでご安心くださいね。「パートタイム労働法」とは、アルバイトの労働条件や環境など全てに対する法律です。2020年4月から、大企業においてはパートタイム労働者の他に有期雇用労働者も対象に含まれることになりました。中小企業は翌2021年4月1日からの適用です。法律の名称も「パートタイム・有期雇用労働法」に変わります。今回の改正で、「正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の間に不合理な待遇差を設けることを禁止」すること、「労働者に対して待遇の説明義務の強化」することなどが見直されました。
就業規則に記載がないと退職金はもらえない
ただし、はじめから退職金制度を備えていない会社やお店もあり、アルバイト先の就業規則に「退職金がある」と記載されていない場合は立場に関係なく退職金をもらうことができません。パートタイム労働法第6条では、会社がアルバイトを雇う時には「賞与・昇給・退職金の有無」について文書等で明示しなければならないという決まりがあります。そのため、就業規則に退職金に関する記載があるはずです。もしも就業規則を確認しても記載が見当たらない場合には、店長に確認しておきましょう。
同一労働同一賃金が適応される
「同一労働同一賃金」とは、正社員とアルバイトの仕事内容に大差がなく、人事異動などの有無や範囲が同じである場合には、同じ賃金を支払わなければならないという意味です。これは、パートタイム労働法にも定められており、アルバイトだからという理由だけで差別的な扱いをすることを禁じています。明らかに正社員と同じ仕事をしている場合、就業規則に退職金に関する記載があれば退職金をもらうことができるのです。ただし、支払い請求はできますが、勤続年数によってももらえるかどうかが異なります。10年前後の長い期間パートとして働いてきた方に、全く退職金を支払わなかった会社は裁判で「違法」だとされています。勤続年数が長ければ退職金を請求しても良いでしょう。
アルバイトの退職金を計算してみよう
次に、アルバイトの退職金の金額について見ていきましょう。
中小企業退職金共済制度が多い
大手系列のチェーン店などでは独自に退職金を積み立てることがありますが、中小の飲食店では「中小企業退職金共済制度」を利用していることが比較的に多いでしょう。これは1959年に国が設けた制度で、アルバイトなどは正社員よりも低い掛け金で退職金を積み立てられ、掛け金は非課税とされています。他にも民間の保険会社を利用して積み立てている企業もあります。各店舗で働く全ての従業員のために、様々な方法で退職金を積み立ててくれているのです。
ただし、個人経営の飲食店などでは退職金に関わる制度を利用していないことも多々あります。アルバイトでも退職金がもらえるというのは経営者、労働者問わず、まだまだ認知されていないことなので仕方のない面もあるのです。
アルバイトの退職金掛金について
先にご紹介した「中小企業退職金共済制度」で退職金を積み立てているとしましょう。アルバイトの低い掛け金は「特例掛け金」として2,000円・3,000円・4,000円の3種類から選べます。また、アルバイトだからといって特例掛け金にせず、全従業員に適用できる5,000〜30,000円の掛け金も選ぶこともできます。
アルバイトの退職金の目安
上記の場合の目安について計算してみましょう。
- 勤続年数5年、掛け金2,000円…2,000円×60ヶ月(5年)=12万円
- 勤続年数10年、掛け金4,000円…4,000円×120ヶ月(10年)=48万円
単純な計算で、上記のような退職金が予想されます。ただし実際には、掛け金や法令の予定運用利回りが足された金額です。そして、実際の運用利回りが予定運用利回りを上回っている場合には、その差額も足されます。
アルバイトの退職金にも税金がかかる
アルバイトがもらう退職金にも税金がかかってきます。しかし、条件内ならば非課税となりますのできちんと把握しておきましょう。
退職金は「退職所得税」という位置付け
まず、退職金は「退職所得税」という位置付けで考えられます。通常の給与にかかる所得税とは異なるので注意してください。アルバイトがもらう退職金にも、この退職所得税がかかってきます。しかし、勤続年数に応じて決められている「退職金控除」以内ならば、退職所得税はかかりません。
【退職金控除の公式】
- 勤続20年以下の方…40万円×勤続年数(80万円未満の場合は、80万円とする)
- 勤続20年以上の方…800万円+70万円×(勤続年数ー20年)
この公式に当てはめて具体例を考えてみましょう。
【勤続年数10年の方の場合の退職金控除】
40万円×10年=400万円
まとめ
今回は、アルバイトで退職金はもらえるのか、金額はいくらなのかについてご紹介してきました。アルバイトだからといって、正社員と同じ仕事内容・条件で働いてきたのに退職金が正社員しか出ないというのは違法です。きちんと理解して、アルバイト先に退職金の申し立てができるようにしておくと良いですね。